小さな作り話 音のまぺ

2021年9月2日木曜日

 音のまぺ

カエルがケロケロと歌ってぴょんぴょんとはねています。
穴からモグラが顔をのぞかせます。
「カエルくんは楽しそうに歌って跳ねるね。君がうらやましいよ」
「モグラくんは歌ったり跳ねたりしないのかい」
モグラは少し困って言いました。
「歌うよ。時々は。それに跳ねたりはしないけど、僕たちは掘りながら進むんだ」
「どんなふうに?」
モグラは少し考えて答えました。
「君みたいに大きな声は出せないけど、天気がいい時は穴から鼻だけ出して鼻で歌うんだ」
「じゃあスンスン歌うんだ」
「スンスンか。そう、スンスン歌うんだよ」
モグラは嬉しくなってきました。
「穴を掘るときは前足でズッ、ズッと掘って、その掘った土は後ろ足でズイと押しやるんだ」
「ズッズイズッズイ掘り進むんだね」
「そうそう、ズッズイズッズイ掘るんだ」
カエルは笑いながら言いました。
「君だって楽しそうに歌うし掘ってるじゃないか」
118/122の小さな作り話



プロフィール

 

松原 俊之

 

小さな作り話作家。プロマジシャンでもありフォークアート作家でもあります。

朗読 カエルとチョウ

 

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