小さな作り話 才能のない男

2021年8月11日水曜日

 ある男が将来の仕事をどうするか悩んでいました。

百発百中で当たると有名な占い師に占ってもらうと「大工になるべきだ。あなたの建築の才能はこの世の誰よりも素晴らしい」と言われました。
周りのすすめもあり男は大工になりました。男は土地と築材を見ると不思議と何をどうすればわかりました。まるでその場にそうあるべきかのような建物が出来上がります。男の建てる家は瞬く間に評判になりました。美しさ、頑丈さともに申し分ありません。
男はほかの大工の半分の努力で一流までなりました。しかし男は嬉しくありませんでした。男は本当は絵描きになりたかったのです。
男は大工をやめ絵描きになりました。最初は何をどう描けばいいのか全くわかりませんでした。ようやく出来上がった絵も誰にもほめてもらえません。
男はほかの絵描きの十倍の努力をし、ようやっと世間に認められ始めました。
男は今が楽しくて仕方ありません。



プロフィール

 

松原 俊之

 

小さな作り話作家。プロマジシャンでもありフォークアート作家でもあります。

朗読 カエルとチョウ

 

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