カニとキツネとタネキ

2021年7月11日日曜日

 春、カニが山登りに出かけると、その途中でキツネに出会いました。

「こんにちは、キツネさん」

「こんにちは、カニ君。どこへ出かけるんだい」

カニは山登りに行くことを話しました。

「山登りなんてやめたほうがいいよ。今日は雨が降るかもしれないし、春の山は虫だらけだし、怪我をするかもしれないし、道に迷うかもしれないし、つまらないに決まってるよ」

とキツネは言ってどこかへ行ってしまいました。

カニはキツネの言うことももっともかもしれないと山に行くのをやめてしましました。

家に帰る途中でカニはタヌキに会いました。

「こんにちはタヌキさん」

「こんにちはカニ君。どこへ出かけるんだい」

カニは山登りをやめて帰る途中だと話しました。

「山登りかぁ、いいなぁ。今日はきっといい天気だし、春の山は桜が咲いているしたくさん生き物がいるし、風も気持ちいいし、山登りはきっと楽しいよ」

とタヌキは言いました。

「でもケガするかもしれないよ」

とカニが言うと

「しないかもしれないし、山に登らなくてもケガはするかもしれないよ。さっきチョウチョを追いかけてたら転んじゃった」

タヌキは照れ笑いをしながら擦りむいた足を見せました。

悪いと思いながらもカニも笑ってしまいました。

「やっぱり山登りに行くよ。タヌキ君も一緒に山登りに行こうよ」

カニはタヌキと一緒に山登りに行くことにしました。

小さな作り話126話目。







プロフィール

 

松原 俊之

 

小さな作り話作家。プロマジシャンでもありフォークアート作家でもあります。

朗読 カエルとチョウ

 

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